【寄稿】キャッチアップ接種を要望する大学生等の声(産婦人科医師 高橋幸子)

【寄稿】キャッチアップ接種を要望する大学生等の声(産婦人科医師 高橋幸子)

HPVワクチンを無料で打つことができなかった年代にも再び無料で打つ事ができるチャンスをください(2020.2.1(2020.6.1改訂))(産婦人科医師 高橋幸子)

関連記事:「HPVワクチン(子宮頸がん等予防)を打つ機会を奪われた若者たちが無料で接種するチャンスをください」(産婦人科医師 高橋幸子)

 HPVワクチンが接種勧奨されなくなってから、ほとんど打たれなくなった学年がすでに大学2年生になっています。大学生の年代になるとセクシャルデビューする割合が上昇します。
 一方、外来診療では、16歳や18歳の細胞診異常が出始めています。HPVワクチンを打っていればこんな思いをしなくてよかったのに、と悔やまれます。
今からでも救われる人がたくさんいます。小6~高1の無料期間を過ぎた人達にも、再び無料で打つことができるキャッチアップ接種のチャンスをください!

◾️キャッチアップ接種を要望する大学生等の声 
【大学1年生 19歳 M・D たんぽぽ】
 私はHPVワクチンを1度も打っていません。副反応を恐れた母は、私のことを思い無料の対象年齢の間に打たない選択をしました。しかし、私自身が大学生となりサークルでの活動を通して『名古屋スタディ』の結果を知り、ワクチンの安全性を理解しました。同時に、自費診療となると約5万円もの費用がかかることも知りました。「なぜ母は無料期間に打ってくれなかったのだろう」と、母を責める気持ちも芽生えました。
 ワクチンの副反応に不安を覚えた私たちのような世代にも、ワクチンの安全性をしっかりと示すとともに接種しやすい環境を整えて頂きたいです。私以外にもそう願う同年代の友人は多くいます。よろしくお願い致します。

【大学1年生 19歳 F・N たんぽぽ】
 私はHPVワクチンを打っていません。丁度私の年代からHPVワクチンの積極的勧奨を差し控えられたからです。当時の私はそんなこともつゆ知らず、気が付いた時には既に無料の対象年齢を超えていました。私たちより上の年代、したがって先輩方はほぼみんな打っています。なのに少し産まれた時期が遅かっただけで、私たちの代は殆どの人がワクチンを打っていません。
 私は大学でHPVについて知りました。そして運良く学ぶことができ、その時、私が打ちそびれたという事実を知ったのです。「セクシャルデビューはHPVワクチンを打ってからにしよう!」と心に決めました。 
 人生の選択肢としてHPVワクチンは常にあるべきだと思います。

【22歳 Y.H. たんぽぽ】
 私は中学生の頃ワクチンを打ってもらいました。子宮頸癌はワクチンを打てば予防できる病気です。今は2人に1人が癌になる時代です。その中で1つでも癌を予防できているという安心感は大きいです。
 昔報道された副反応は、ワクチンとの因果関係が証明されていないにも関わらず、それが報道なされていません。厚労省が、ワクチンは安全なものであると大々的に発表してくれれば、多くの人の偏見を払拭できると思います。
 ワクチンを打ちたいけれど、医療費の関係で打てない人がいると聞いています。
 是非、そんな方々がワクチンを打って、癌を予防できますように。

【21歳 まな DAISY】 
 ヒトパピローマウイルスは性行為をした事がある人はうつる可能性があるということ。毎年約1万人の人が子宮頸がんになり約3,000人が亡くなっていると言われています。副反応のことばかり取り上げて批判するのではなく、病気になってしまう人が多い現実に目を向けて欲しいです。また、マスコミで騒がれた時期にHPVワクチンを受けられなかった私たちの中には、受けたくても学生でお金がなかったりして、その機会を逃している人がいます。
 HPVワクチンをもっと手軽に受けられるようにしてください。
 

◾️大学生からの声(追加 2020.3.17)
【19歳 R・I】
 現在19歳の2000年生まれの大学生です。HPVワクチンを接種後の体調不良等の副反応のニュース等で定期接種の対象年齢中に1回も打てずに打ち逃しています。実際に同級生に同様の状態の子はたくさんいます。
 現在、接種したいと考えていますが接種に約5万円かかるという大きな壁があります。5万円は大金の為、学生が簡単に出せる金額ではありません。親に頼もうにも良いイメージがなく厳しいですし、奨学金を借りて大学に通っている私はその金額があれば学費に回してしまうのが現状です。
 現在でも子宮頸がんで亡くなっている方は多くいらっしゃること、注射を打つことによってリスクを減らせるということを勉強を始めてから知りました。注射で予防できる病気なのであれば公費で打ち逃した世代にもう一度打つチャンスを頂けませんでしょうか?

【20歳 C・Y】
 国立がん研究センターの調査によると、現在日本では子宮頸がんによる死亡者数は増加しており、罹患層の若年化も進んでいます。にも関わらず、数年前のワクチンによる副反応についてのメディア報道の過熱や、その後も続く接種の積極的推奨中止措置により、若者は公費でお金をかけることなく自分の健康を守る機会を失い続けています。
 後から接種した方がいいと知っても、自己負担で打つにはあまりに大きな金額です。受ける機会を逃さざるを得なかった若者たちが、負担なくHPVワクチンの接種ができるようになることを強く望みます

◾️大人からも声が届いています(追加 2020.4.5
【26歳 S・K】
 確か大学生の頃だったと思います。母からHPVワクチンの接種を勧められ、打つつもりでいました。しかし若年齢女性のワクチン接種後の「体の異変」を映したマスメディアによる報道を何度も目にし、母からは「絶対打っちゃダメ」と言われ、私自身も恐怖を覚えて断念しました。日本のHPVワクチン接種の遅れの異常さや報道で目にしていた諸症状とHPVワクチンの因果関係が証明されなかったことなどを知ったのは、ここ最近の話です。健康に関する選択肢を奪われたことへの悔しさと憤りを感じております。当時の報道を訂正・撤回するような声明や特集が発表されていないことも大変無責任です。無料で接種できるよう制度を整え、補償してください。

【28歳 S・O】
 子宮頸がんワクチンの存在を、高校生のころにCM放送で知りました。しかしその後、子宮頸がんワクチンの副作用についての放送が増え、接種をやめました。そのまま、日々の忙しさに追われてアラサーの年齢まできてしまいました。
 子宮頸がんは女性なら「誰でも」経験する可能性がある病気であり、それはワクチンにより予防でき、さらに予防者が増えれば社会全体からウイルスが減っていく。ワクチンには社会的な意義も大きいのだと知りました。
 日本の女性が、子宮頸がんワクチンがもたらす意義についてもっと知るべきです。また、接種は必須のものであると国が宣言し、すべての女性がワクチンを接種できる制度を整えるべきであると思いました。

◾️大学生からの声(追加 2020.6.1
【Ellen 19歳】
 副作用のニュースが流れたのと同時に、私のワクチン接種の機会も流れました。親に止められたからです。大学生になってから六万円を支払って仕方なく自主的に接種しましたが、あまりに負担が重すぎました。まだ接種できていない同年代の女性に接種の機会をちゃんとください。

【22歳 R・O】
 子宮頸がんの多くはHPVワクチンで予防することができます。また、ワクチンは予防効果はあってもHPVに感染した細胞からHPVを排除するものではないため、なるべく早く接種すべきといえます。少子高齢化が進行しており、医療費を含む社会保障費がかさむなかで、予防できる病を予防する策を取ることで救えるのは子宮頸がんになるかもしれない人だけではありません。産みたかったのに産めなくなった人も納税する人も納税してほしい人も救うため、日本全体のための行動を求めます。

【18歳 れんれん】
 めざましい医療の進歩で、「救える」命がたくさん増えてきました。HPVワクチンもその進歩の中で生まれたもので、今では世界中で接種され、子宮頸がんは予防できる病気になっています。しかし日本ではその流れに逆行するように、毎年1万人の子宮が摘出され、3000人もの方が亡くなっています。科学的には証明されない副反応によって、ワクチンの積極的な接種が推奨されていないからです。このため私は無料で接種できる期間に情報を得ることができず、今は高いお金を出してでも接種することを検討しています。私たちのようなチャンスを逃してしまった世代に、もっとワクチンを受けやすくさせて欲しいのです。そしてワクチンの必要性が再び広く理解されて欲しい。未だに当時の報道の印象は消えておらず、「おかしくなってしまう」と敬遠している人は多くいます。私の友達もそうです。政治が覚悟を決めて動けば、摘出しなくて良い子宮を救い、死ぬ必要のない人たちを救うことができるのです。

たんぽぽ  女子栄養大学   
DAISY   東洋大学

【お問い合わせ】
埼玉医科大学 医療人育成支援センター・地域医学推進センター
埼玉医科大学病院 産婦人科 助教 
高橋幸子(sakko_t@saitama-med.ac.jp)

◾️別添 資料 
【中学3年生が理解できるHPVワクチン】2020年1月女子栄養大学 たんぽぽ 作成
 この資料は、中学・高校の外部講師による性教育講演会の際に配布することを想定したパンフレットです。<女子栄養大学たんぽぽ>では外部講師が中学・高校で講演をする際の教材を作成することを通して、大学生が性教育を学んでいます。

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