新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の感染が拡大している。新興感染症でワクチンも根治できる治療法も無い、まだまだ分からないことが多いことが、大きな不安を生み出している。
全国一斉休校や大規模イベントの自粛が要請され、マスクやトイレットペーパー等の品切れなど、社会的混乱が毎日のように大手メディアをはじめSNSなどでも報じられている。
発熱や咳などの症状があれば「COVID-19か??」と疑い、疑われ、程なく回復し「多分違うね」となると、妙に安心したりする。
もはや、今の日本はCOVID-19ワンイシュー状態といえよう。
しかし、COVID-19への不安を多くの人々が抱くことは仕方の無いこととして、果たしてCOVID-19だけに全ての目を向けていて良いのだろうか。
国立感染症研究所感染症疫学センターでは、感染症法に基づく感染症報告数を公開している。
そこで、例えば「DWR速報データ 2020年第8週」(2020年03月03日公開)を見てみると、
2020年08週(02月17日~02月23日)1週間の発症数/2020年累計数が、
COVID-19 80/431
結核 274/2417
百日咳 108/1217
と報告されており、当該1週間でCOVID-19の3倍以上の結核患者が報告され、死亡例も生じる百日咳もCOVID-19を上回る患者数が報告されており、感染のリスクが高い疾病はCOVID-19以外にも生じていることがわかる。
(ちなみに梅毒も53/757で、累計数はCOVID-19を上回っている)
もちろん、それぞれが異なる感染症であり直接比較してどちらが怖い、不安という正解があるものでは無いが、しかしCOVID-19だけが社会を脅かしているわけでは無いことは押さえておかなければならないだろう。
明日からCOVID-19のPCR検査が健康保険適用となるが、人々が不安に駆られてCOVID-19だけを視野に行動する、例えば医療機関に押しかけるようなことがあれば、それはそれだけ医療のリソースを消費し、それ以外にも生じている感染症や疾病へ割くことのできるリソースが減少することにもつながる。
一つのリスク回避にとらわれると、他のリスクが増大していることに気がつかない、そんな非合理的な行動を人間はとりがちである。
正しく理解し、適切に怖がること、COVID-19だけにとらわれないことを社会全体で共有すべきでは無いだろうか。
(KEY CHEESE 編集部)