存在意義を増すGavi〜Gaviを支援する署名活動も始まる〜

存在意義を増すGavi〜Gaviを支援する署名活動も始まる〜

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が世界規模で広がっている。中国や韓国、台湾など感染拡大のピークを過ぎたとみられる国がある一方、日本や欧州諸国、米国のように感染拡大阻止に取り組んでいる真っ只中の国や、アフリカ諸国のようにこれから感染拡大が予想される国々もある。
COVID-19は、改めて感染症は国境を越え、一度感染が拡大してしまうと社会全体を大混乱させることを再認識させた。

COVID-19の感染拡大は、同時に他の感染症の拡大の危機を生じさせている。麻疹(はしか)やポリオをはじめとする、VPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで防ぐことのできる疾病)へのワクチン接種が、いくつかの理由から滞り始めているのだ。
治療薬もワクチンも存在しないCOVID-19の感染拡大が、ワクチン接種で確実に防ぐことのできるVPDの感染拡大をも生じさせようとしている。

Gaviの活動は支援対象国だけではなく、ドナー国にも裨益する

Gavi(The Vaccine Alliance)は各国政府や世界保健機関(WHO)、国際連合児童基金(UNICEF)等の国際機関、製薬企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団等の財団、製薬企業等の民間企業などからなるアライアンス組織で、これらからの出資等を基に、一定の基準に合致した低開発国を対象にワクチンの調達と供給、現地での保健システムの構築を進めている。
2000年のダボス会議の合意に基づき設立され活動を開始、これまでに7億人以上の子どもたちにワクチンを届けてきた。現在は73カ国が支援を受けているとされるが、特徴的なのは国際協力や支援にありがちな「支援しっぱなし」ではないこと。ワクチン接種を支援しつつ保健システムの構築や被支援国内でのワクチン流通などの市場形成までを実現し、被支援国が支援を受けなくてもワクチン接種を継続できる体制・環境を整えることで、16カ国が支援を受けなくても済む自立状態になり、支援から「卒業」したことだ。
支援に依存させるのではなく、支援を必要としない自立を促すこと、これがGaviの活動の大きな特徴と言える。故に、国際保健の分野では「ワクチンといえばGavi」という知名度と信頼を得ている(一般的にはGaviの知名度は低いと思われるが)。

Gaviの支援は、世界中の国々にワクチンを届けることを軸としながら、保健システムという言わば灌漑設備を行き渡らせることを意味する。これは感染症の流行や蔓延を防ぐことを可能にする。そして、低開発国での感染症対策が進む〜感染症が流行しない、蔓延しない〜ことは、これらの感染症が国境を越えて世界中に拡大することを防ぐことに繋がる。COVID-19のパンデミックで明らかになったように、感染症は容易に国境を越える。感染症の水際対策は効果は限定的で、感染症の流入を完全に防ぐことは期待できない。つまり、Gaviは被支援国のみならず、ドナー国をはじめとした世界全体に利益をもたらすものといえる。

現在、COVID-19の流行により、必要なワクチン接種が滞り始めていることが報告されている。
ユニセフは4月14日、「はしかやポリオの予防接種が一部の国で中断されており、大流行を引き起こす可能性がある」と警戒を促している(参考:BBC)。
この問題は予防接種プログラムが中断された国々だけのものではない。例えば日本は、2015年に世界保健機関(WHO)の西太平洋事務局から、麻疹排除国と 認定されている(麻しんについて:厚生労働省)が、その後も麻疹の国内での小規模ながら流行がしばしば報告されている。これは、日本土着の麻疹ウイルスによる感染は排除できたが、国外からの持ち込みによる感染までは排除できていないという現実を意味する。また、ポリオは効果が強い一方でワクチン由来のポリオ発症リスクを伴う経口生ワクチンから、効果は少し弱まるがより安全性の高い不活化ポリオワクチンへの切り替えが行われているが、フィリピンやマレーシアでポリオのアウトブレイクが報告されており、いつ日本国内に持ち込まれてもおかしくは無い状況を指摘する専門家もいる。
こうしたことを鑑みると、他国でのワクチン接種の停滞や感染症の流行は、対岸の火事ではなくまさに自国の感染症拡大危機に直結していると言えよう。まさに、他国の保健システムを構築し予防接種プログラムを普及させることは、自国の国民を感染症の罹患から守り、またより安全な予防接種プログラムへの移行に必要な条件を保持することなのだ。

Gaviを支援する署名活動

現在、Gaviへの日本からの支援金の増額を求める署名活動が行われている。
Sign For Life」と名付けられたこの署名活動は、「一般社団法人andaid」が取り組んでいるもの(プレスリリースはこちら)。
「Sign For Life」のサイトからオンラインで署名することが可能だ。
サイトは少々(かなり)見辛く情報が掴みにくいが、趣旨は「日本も2011年からGaviを支援を開始。その支援を通じて多くの人にワクチンを届けてきました。この署名は日本政府に提出され、日本のGaviに対する更なる支援金の増額を求めます。」とGaviへの日本からの支援金の増額を求めることにある。
5月1日時点で3万人を超える署名が集まっているようで、Instagram等のSNSを中心に拡散されている様子。

COVID-19後の世界の保健システムを考えると、ますますGaviの存在意義が高まることが予想される。
多くの署名が集まることを期待したい。

(KEY CHEESE 編集部)

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