森三中・黒沢さんの感染報告を受けて〜芸能界やメディアが今やるべきこと〜

森三中・黒沢さんの感染報告を受けて〜芸能界やメディアが今やるべきこと〜

森三中の黒沢かずこさんが、COVID-19に感染している事が明らかになり、その感染報告を受けて、何人かの芸能人がこの件について発言している。また、テレビでも情報番組を中心にこの件について多くの時間を割いて報じている。

主だった彼らの主張は、慎重な言い回しをしている人も少なくないが、概ね
・「黒沢さんは感染しないように気をつけて行動していた。三密と言われるようなシチュエーションで罹った訳ではない」
・「自ら症状を感じ、医療機関を受診、また保健所にも電話しPCR検査の実施を求めたが『必要なし』とされ検査してもらえなかった。粘りに粘って実施に至ったもの」
・「検査していない人たちの中にも、多くの陽性者がいるはず」
といった内容で、黒沢さんへの批判を受けてそれを庇ったりフォローしようという気持ちが込められたものが多い印象だ。
ネットやSNSでは黒沢さんへの言いがかりとも言えるような批判や誤解・憶測に基づく誹謗・中傷も見られるので、親しい人たちがそうした不適切な攻撃に反撃することは理解できる。

ただ、彼らの主張が結果として、「必要な検査が受けられない人が数多くいる」「政府はもっと検査数を増やすべきだ」といった意見につながってしまっていることは、残念でならない。
COVID-19対策の最重要点は、「死者を増やさない」ことである。死者を増やさないために、「重症化した感染者を集中的に治療する」のであり、重症化した患者やそのリスクが高い感染者を見逃さないように取り組んでいるのが現在の状況だ。症状が軽い、あるいは無症状の感染者について検査をする意味が無いわけではないが、それは優先順位としては上記よりも一段落ちたものとなる。そして現在、PCR検査の現場、そしてその先にある医療現場は限界を超えた状態でフル稼働し続けている。故に、重症化した患者やそのリスクが高い感染者を見逃さないための検査に注力せざるを得ないのだ。
このふるい分けは医師や保健所が行なっている。もちろん、その判断が必ずしも適切なものばかりでは無いだろう。しかしながら、報道されているような黒沢さんの症状では、やはり「不要」と判断するケースが多いのでは無いだろうか。

坂上忍氏が、この件に関連して検査数の少なさ、感染者数の少なさを「まやかし」と罵倒し怒りを露わにしたそうだが、極めて残念な態度だ。
同じ言葉を、限界を超えて奮闘している医療現場や保健所の状況を見た上で、直接職員の前で吐くことができるのであろうか。死者を増やさないために、日常生活を捨て自らの健康と引き換えに奮闘している医療機関や保健所の職員を、さらに追い詰める言動が、現在の状況の改善に寄与するとは到底考えられない。

黒沢さんの感染のケースで芸能界やメディアが今やるべきことは、「黒沢さんのケースのような経過や症状、状態でCOVID-19に感染していることはあり得ます。従って、同じような状況であったら検査で陽性かどうかを確認することなく14日間、自宅で静養しましょう」「職場の管理者の皆さん、従業員の方が黒沢さんと同じような症状を訴えたら、感染診断を求めることなく14日間の自宅療養を指示して、給与を保障しましょう」というメッセージを社会全体に発信することではないか。
「陽性と診断されなければ休めない」という声をよく聞くが、今の状況で変容すべきは、限界を超えた医療機関・保健所ではなく、彼らの負担を軽減し「死者を増やさない」ことに寄与できる、事業主・雇用主を中心とした職域の考え方と一人一人の行動である。確かに確定診断を受けた方が、何かと判断には都合が良い。しかし、その都合の良さを捨てでても行動を変容することは、今の医療機関や保健所の職員たちに更なる負担を負わせるよりも、よほど容易いもののはず。
何より、今、限界を超えた人たちに更なる限界を強いる対策は未来に何も残さないが、職域や個人の行動変容は再び生じるかもしれないこうした感染症パンデミックにおいて有効となる、未来につながるものである。

芸能界やメディアには、検査しなくても症状があれば14日間休もう!と広く呼びかけて欲しい。

(KEY CHEESE 編集部)

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